組織のチカラを引き出す

会議を活性化するファシリテーションの基礎

本稿は財団法人ふくい産業支援センターの機関誌「フロム」に連載したものです。



第1回  3人寄れば文殊の知恵って本当でしょうか?


天才を集めた組織であっても、凡庸な結果しか出せないことがあります。平凡な能力しか持たない人の集めた組織が、天才を超える成果を出すことがあります。成果の分かれ目はどこにあるのでしょうか?それは、話し合いの方法、つまり「どのように話し合うか?」にあります。「3人寄れば文殊の知恵」は必ずしも真実ではなく、話し合いの「方法」によって真実になるのです。この連載では、話し合いを活性化するスキルである「ファシリテーション」を紹介しながら組織のチカラ(創造力と活力)を最大限に引き出す方法を探っていきます。


発創デザイン研究室 冨永良史



●会議、好きですか?

 「今日は会議か・・・サボリたいなぁ。どうせ部長がぜんぶ決めちゃうんだし。何のために集まってんだか・・・仕事たまってるのに。まったく・・・」こんな愚痴、よく聞きませんか?言ってませんか?

 会議って、かなりの嫌われ者ですね。ところが困ったことに、企業も役所も学校も自治会もボランティアも、組織のあるところにはどこでも会議がついてまわります。人が集まって何かをしようとしたら、まず「会議」なんです。

 今日もあちこちで「イヤイヤ会議」が開かれています。どうせやらなきゃいけないなら、もっと意味のある会議ができないのでしょうか?「さぁ今日は会議だ!どんなすごいアイディアが生まれるかな」とワクワクしながら会議室に向かえないものでしょうか?      


●太古の昔から話し合ってきたけれど・・・

 ところで、どうして会議をしなければならないのでしょうか?組織の決まりだから?なぜ決まりなのでしょうか?太古の昔から私たちはずっと話し合いを続けてきました。どうして私たちは、集まって話し合うということを始めたのでしょうか?それはつまり、「三人寄れば文殊の知恵」だからです。

 私たちは天才であろうが凡才であろうが、それぞれに個性的な能力を持ち、一方で能力の限界を抱えています。だからこそ、一人ひとりの能力を引き出し、ひとつにまとめることができたなら、凡才組織でも天才を超える成果を出すことができます。「三人寄れば文殊の知恵」という言葉にはそんな意味が込められているはずですが・・・


●三人寄れば「バカ3倍」?

 「ひとりで考えるよりも3人集まった方がより良い知恵が生み出せる」。もしこれが常に本当なら、会議が嫌われることはありません。誰もが会議を好きになるはずです。

 では、なぜ会議が嫌われるのでしょう?実際の会議が、3人集まったがゆえに混乱・紛糾・停滞し、かえって凡庸(または劣悪)な結論しか出せなかったり、結論そのものが出せなかったり、まるで「三人寄ればバカ3倍」になってしまうからです。

 あなたの会議は「文殊の知恵」でしょうか?それとも「バカ3倍」でしょうか?「文殊の知恵」を生み出すには、ただ集まれば良いというものではなく、どのように話し合うか?という話し合いの方法について真剣に考える必要があります。


●会議室から生み出されるウイルス

 会議は知恵を生み出すだけでなく「気分、雰囲気、風土」を組織内に伝染させる作用があります。もし、退屈で生産性の低い会議を繰り返すならば、その雰囲気が出席者の言動を通じて会議室の外に伝染し、無気力な組織になっていくでしょう。逆に、中身の濃い創造的な会議ができれば、その組織にはやる気とアイディアが次々とあふれる風土が根付いていくことでしょう。

 会議の出席者の言動は、まるでウイルスのように組織全体に伝染していくのです。つまり、会議室とはウイルス培養室のようなものなのです。どんなウイルスが生み出されるか?はどんな話し合い方をしたか?で決まります。


●話し合いをファシリテーションする

 ここまで見てきたように、話し合いの方法が影響を与えるのは、会議の結論にとどまらず、組織風土のあり方にまで及びます。そこで注目したいのが、この連載のキーワードである「ファシリテーション」です。【Facilitation】とはもともと「円滑にする」という意味があり、「ひとりひとりの能力・思いを引き出し、組み合わせ、組織として実現するためのチカラに変える話し合い」ができるように、チーム全体のコミュニケーションを円滑にする方法の総称です。

 ファシリテーションが最高にうまく作用した会議の後には・・・「思っていたこと全部話したよ。すっきりしたぁ〜。あんなすごい結論が出るなんて思っていなかったな。やっぱりみんなで話し合うって大事なんだ・・・」という爽快感が生まれるはず。そんな会議の方法を探っていくのがこの連載の目標です。


●ファシリテーションって何すること

 では、どんな方法を用いれば話し合いの質が高くなるのでしょうか?創造的な会議に「ある」のは何でしょう?退屈な会議に「ある」のは何でしょう?何があれば私たちは創造的に話し合えますか?創造性を邪魔するのは何でしょうか?そのために、私たちはどんなコミュニケーションをすれば良いでしょうか?是非、日頃の話し合いを振り返ってみてください。次回以降、具体的なファシリテーションをご紹介していきます。