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■オピニオン

2.雰囲気に投資する




場の雰囲気が悪いとか、良いとか言います。

雰囲気が悪かったから、ろくに話もせずに帰ってきたよ。
雰囲気が良かったから、ずいぶんと思いきった決断をしたよ。

のように使われます。

場の雰囲気は目に見えません。言葉にするのも難しい。
それは偶然に左右される面が大きいものとして、積極的な制御の対象とはされていません。
しかし、その雰囲気こそ、組織運営上、とても重要な要素なのではないでしょうか?
真正面から、その制御、いや醸成に向けて努力・投資が行なわれるべきものではないでしょうか?


■戦略より、感情が結果を導く
□戦略が成功しないのは、なぜ?
経営を考えるとき、その重要な要素として挙げられるのは
理念、戦略、マーケティング、人事、技術、財務・・・
などです。
これらは、つねに重要課題としてすべての経営者が取り組んでいます。
ビジネススクールでも必須と言える科目群です。

でも、これらを学ぶこと、ひとつひとつに方法論を持つことは、決して成功を約束しない。
素晴らしい理念、戦略、そのほかの知識をもってしても、組織から望む成果を引き出せない。
そんなことは、珍しくありません。

なぜか?
誰もが、わかっているのではないでしょうか?
ただ、それが原因として、あまりに実体化しにくく、制御の対象として見ることが難しいために
原因として、つまり次の改善点として認めたくない。

どうしようもないものは、次もどうしようもないんだ。
といった具合です。
その、どうしようもないもの、とは・・・

□人は感情で判断し、行動する
人の感情です。
性格なら、まだつかみやすい。ある程度は一貫していますから。
感情は、本当の生ものです。その場限りで、どっちに振れるかつかめない。
ちょっとしたことでプラスにもマイナスにもなります。

理念、戦略に代表される経営理論が必ずしも成果を約束しないのは
それが対象としている、人を「感情を持つもの」として想定していないからです。
客観的に正しければ、論理的に正しければ、人はそれに従う、という「理性人」を想定しているからです。

実際の人は
正しいからって、その通りするとは限らない。
間違っているのがわかっていても、それをやらないとは限らない。
損するとわかっていても、得する選択肢が見えていても、損を取る。
そんなことが、日常茶飯事です。

人は判断し、行動するとき、多分に感情の影響を受けています。
戦略によって結果が導かれるのではなく
感情によって戦略が理解され、その理解に基づいて行動が起こされる。
つまり、結果は感情に導かれていると言えます。

□感情にもっと注目を
経営理論の中に、感情はもっともっと重要な位置を占めるべきです。
今も、EQ、リーダーシップ理論などの中で感情は重要なテーマですが
まだまだ、財務会計などのメジャー分やと比べると、マイナーです。

感情は、すべての根幹に位置する最重要課題だと思うのです。


■感情を生み出す雰囲気
さて、その感情は場の雰囲気に左右されています。
初対面の人ばかりで構成されたグループでは
まず固い雰囲気が生まれるでしょう。
そんな場から、唐突に親しみや、信頼の感情が生まれることはありません。

いつも勝利に向けて辛い練習を共にしているチームでは
一丸となって勝利を目指す雰囲気が生まれるでしょう。
そんな場からは、お互いを認め合い、励まし合う感情が生まれやすいでしょう。

□売上げ作りより、雰囲気作り
場の雰囲気となると、感情以上に、制御・醸成の対象にしづらい。
感情はひとりのものですが、雰囲気は多数の感情の相互作用によって生まれるものですから。
あまりにも難しく思えるのです。

実際、場の雰囲気を作るのは、売上げを作るより難しいのかもしれません。
しかし、それを追求する価値は、売上げを追求する以上にあるはずです。
なぜなら、あらゆる行動の、つまりは成果の起因として「雰囲気」があるからです。

□雰囲気が成果を生む連鎖反応
場の雰囲気が、感情を生む。
感情が、自分の置かれた環境の認知(理解の仕方)を生む。
認知が、判断を生む。
判断が、行動を生む。
行動が、成果を生む。

といった具合に雰囲気から成果までが連鎖の関係にあります。
従来、成果を上げるために、組織変革として一般的に行なわれていた
戦略、アクションプランの見直しなどは、「判断を変える」または現状に対する「認知を変える」
といったレベルの話です。

それはある程度の成果は残しますが、根治療法ではない。
そのより下層に、感情、場の雰囲気が埋もれているのですから。
そこに手をつけてこその、「変革」です。

□雰囲気レベルからの「変革」
この雰囲気レベルからの変革に成功するリーダーもいます。
それは、カルロス・ゴーンなど「カリスマ」と呼ばれるリーダーたちです。
彼らは、自分が身にまとっている強力なプラスの雰囲気・オーラと共に
魅力的な言葉を発し、実際に行動します。

オーラと共に打ち込まれる言葉、そして行動がチームの雰囲気を一新し
メンバーの感情を、認知を、判断を、行動を変えてしまうのでしょう。

このプロセス、そしてその成果は、一部のカリスマにしかできない例外的なものとしておくには
あまりに重要すぎます。

□雰囲気の追求
場の雰囲気をいかに作るか。
プラスの感情を生み出す雰囲気とはどんなものか、それはどのように生まれるのか。
プラスの感情を阻害する雰囲気とはどんなものか、それはどのように生まれるのか。
雰囲気を醸成するリーダーシップとは、どのようなものか。
それは身につけることができるのか、それともやはり、例外的に可能なものなのか。

例外と捉える前に
お金と時間とエネルギーをかけて、追求に追求を重ねるべきテーマです。
経営者はじめ、様々なリーダーシップを発揮する立場にあるひとにとっての
最重要課題ではないでしょうか?


■雰囲気は盗めない
雰囲気を最重要課題として追求すべき理由は、もうひとつあります。
それは「雰囲気は盗めない」からです。
知的財産権の保護をどれだけ叫んでも
製品として形にできるものは、そのノウハウを盗まれる可能性は常にあります。
模倣も盗むことも可能です。

しかし、雰囲気は盗めません。
どんなに詳しく成功例を公開したところで、それはその組織にとって成功したノウハウにすぎません。
リーダが違えば、メンバーが違えば、有効な方法も異なります。

□究極の経営資源
もし、活力と創造力があふれる雰囲気作りに成功したならば
それは、究極の経営資源を手に入れたに等しいでしょう。

お金よりも、人材よりも、高価な設備よりも、希少です。
しかも盗まれません。真似することもできません。

雰囲気は目に見えず、正面から考察されることも少ないのですが
とても有効な投資対象ではないでしょうか?